「え、それモンスター?」
VTR250に乗っていると、そんな風に聞かれた経験がある方も多いのではないでしょうか。
角度によってはドゥカティ・モンスターそっくり。
でも、これは偶然ではありません。
実は、VTR250とモンスターには“共通のデザイン思想”が流れているのです。
今回はその理由を、バイクデザインの背景から解き明かしていきます。
ドゥカティ・モンスターの生みの親「ミゲール・ガルッツィ」
1993年、ドゥカティ・モンスターが登場。
この“ネイキッド×スポーツ”のジャンルを確立したのが、イタリア人デザイナーミゲール・ガルッツィです。
彼の哲学はシンプル。
「ライダーが“自分のバイク”と感じられる、無駄のない構成」
・エンジンをフレームの一部として見せる
・トラスフレームで軽量&スポーティに
・個性的だけどシンプルな美学
この考えが、モンスターのアイコンであるLツイン+トラスフレーム+ミニマルな外装を生み出しました。
VTR250もトラスフレーム+Lツイン
そして、1997年に登場したホンダ・VTR250(キャブモデル)。
このバイクもまた、水冷90度Vツイン(Lツイン)+トラスフレームという構成でした。
「え、なんで国産の250ccにこんなフレーム?」と当時は驚きの声も。
実はこのデザイン、完全なオマージュとも言える構造であり、明らかにモンスターを意識した作りだったのです。
なぜホンダは“国産モンスター”を作ったのか?
90年代後半、バイク市場では
「ネイキッドで軽快、でもスポーティ」なスタイルが流行し始めていました。
そこに目をつけたホンダが出した答えが、**“誰もが扱えるライトなモンスター”**だったのです。
- モンスター:高価・大排気量・維持費が重い
- VTR250 :安価・250cc・信頼性高い
つまり、**“ドゥカティに憧れる若者に向けた現実的な選択肢”**として設計されたのがVTR250だったと考えられます。
見た目以上の共通点
- 両者ともLツイン特有の鼓動感
- 軽快でシンプルなデザイン
- トラスフレームによる剛性感とスタイル
- エンジンが主役のバイク構成
どちらも、ただの移動手段ではなく、“バイクに乗る楽しさ”を味わわせてくれるモデルなのです。
違いは?あくまで“親しみやすさ”重視
ただしVTR250はあくまで「万人向け」に設計されており、
- エンジン特性はマイルド
- 足つき・取り回し重視
- サスペンションや装備も実用寄り
つまり、「モンスター風」でありながらも、ホンダらしい完成度と実用性を持ったネイキッドだといえます。
まとめ:VTR250は“イタリアンデザインの遺伝子を持った国産機”
偶然似ているのではなく、
明確な意図と背景があって生まれた「国産モンスター」=VTR250。
今となってはもう新車では手に入りませんが、
中古で出会えたら、ぜひ一度その魅力を味わってみてください。