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CBR1100XXスーパーブラックバード

バイク紹介・インプレッション

—— もう二度と現れない、最強の黒い伝説 ——

ある夏の日、知り合いに新しく買ったSSバイクを見せてもらった。少しだけ乗らせてもらったあと、自分のCBR1100XXで家に帰る途中、感覚が残っていたのだろう。いつものようにコーナーへ進入した瞬間、あの感覚が一瞬で崩れた——「止まらない」……まるで壁に突っ込むような恐怖を味わった。

これがCBR1100XXだ。重く、デカく、曲がらず、止まらない。だが、とんでもなく速い。


■ CBR1100XXとは何者か

1997年に登場し、当時の最高速記録を更新するために生まれたバイク——それがCBR1100XXスーパーブラックバード。

名前の由来は、アメリカの偵察機“SR-71 ブラックバード”。世界最速を極めるためにホンダがすべてを注ぎ込んだ、まさに直線最速のためのバイクだ。

そして今、自分が所有しているのは海外仕様のフルスケールメーター装備、フルパワーバージョン。200km/hなんてメーターをチラッと見たら“もう超えてる”。

スピードが出すぎて危ない? そんなレベルじゃない。「気づけば出ている」んだ。


■ 街中は最も危険な場所

CBR1100XXの真の恐ろしさは、サーキットや高速道路ではなく、街中にある。止まらない、曲がらない、なのに異常なまでに加速する。

信号待ちからアクセルを軽く開けただけで、あっという間に法定速度。まるで制限速度がアイドリングで出てしまうかのよう。

普通に走ることが、こんなに神経を使うバイクがあるだろうか?

扱いを間違えれば、命を持っていかれる。


■ 峠では”腕”がすべて

CBR1100XXは峠道でも“異質”だ。

一見、重量級で鈍重そうに見えるが、重心が低く、トルク特性が滑らかなため、乗り方によっては想像以上に素直に走る。

ただし、それはあくまで“乗り手次第”。

自分も今のSSに少し乗った感覚でコーナーに入ったとき、まったく同じ感覚では止まらないことに気づき、心底ヒヤッとした。何度も走り込んで体に染み込ませていないと、一発で事故る。CBR1100XXは、腕を問われるマシンなのだ。

「攻めていないのに、速い」。 それは確かに言える。しかしそれは、“正しい乗り方”ができたときだけの話。少しでも油断すれば、一瞬で取り返しのつかない状況になる。


■ 現代SSやハヤブサとは“別物”

最近のSSやハヤブサにも乗ったことがある。だが、それらはよくできた“高速の道具”という印象を受けた。

CBR1100XXは違う。

これはもう道具ではない。理屈でも、電子制御でもない。完全に“マシンと人間の相性”で決まるバイクだ。

優しさなんてない。従わせるのは己の経験と技術、そして覚悟しかない。


■ 終わりゆく時代が生んだ、4ストの最終形態

CBR1100XXは、マッハやKHが象徴する2スト時代の狂気とはまた違う。

彼らが“軽さと加速”の暴力なら、CBR1100XXは“質量と加速”の暴力だ。4ストという枠組みのなかで、ここまで加速だけを追い求めたバイクは他にない。

その速さはただのスペックではない。生きるか死ぬかの境界線に立たされる“実体験”として存在する。


■ 結論:CBR1100XXは最強の怪物

CBR1100XXは「黒い死神」にも「白い天使」にもなれる。

それを決めるのは、ライダーの腕、そして覚悟だ。

マッハやKHが2ストの狂気を象徴するなら、CBR1100XXは4ストの終着点。

最強の怪物——それは、もう二度と作られることのない、時代の狭間に生まれた“黒い伝説”である。

命が惜しいなら、乗らない方がいい。それほどのバイクだ。